福岡、佐賀、長崎、熊本と4県をまたぐ有明海は、自然の宝庫「奇跡の海」と言われる海だ。最大6mの干満差がある遠浅の沖は海苔作りに適した環境で、満潮時は冷たい海水の中で栄養を含み、干潮時には太陽の光をいっぱいに浴びて、美味しさを閉じ込める。なかでも自然の甘みと潮の香りをそのまま詰め込んだ「江の浦海苔本舗」の海苔は、その年の最初に伸びてきた芽だけで作る一番摘み海苔だ。
幼少期から祖父の海苔養殖の家業を手伝っていたという森田修司さんは、33歳の時自らも海苔漁師になった。9月には沖に出て竹の支柱を立て、10月末に種付け、11月下旬には収穫がスタートする。降水量や風の吹き方一つでその年の出来は大きく左右された。そんなある日、「最近の海苔は味が落ちた」という声を耳にする。市販の海苔を食べてみると、確かに普段自分が食べている海苔とは別物だった。海苔本来の味である磯の香りと旨みを食卓に届けたい、そんな思いから漁師を辞め、本格的に海苔作りに取り組むことになる。
海苔は沖の方から岸にかけて順番に収穫する。一番摘み海苔のある場所は海水温が高く、プランクトンも多いため柔らかい海苔が育つ。なかでも森田さんの基準をクリアするのは、収穫初日から3日目までの海苔。全体からするとわずか2%しか獲れないが、岸に近づけば近づくほど海水温は低くなり硬い海苔になるため、厳しい目で見極める。素材が良くないとどれだけ加工しても美味しい海苔は作れない――。元漁師の誇りは決して揺るがない。
森田さんは数年に一度、植林のために山へ出向く。海苔作りには海の恵みだけでなく、山からの栄養が必要だからだ。「九州の自然の循環なくして、美味しい海苔は生まれない」。食卓にホンモノの海苔を届けるために、今日も熱い思いを灯し続ける。
森田修司さんのオシイチ!
「のりフレーク」(オリーブオイル)
オイル漬けなのに、ザクザク食感!?
トーストやパスタとの相性抜群です。